一般財団法人電力中央研究所

注目ポイント

幅広い分野の専門家が結集し、科学技術研究を通じて電気事業と社会の発展に貢献してきた電力中央研究所は、本年創立75周年を迎えました。
私たちは、ヒートポンプを核としたエネルギー利用技術の研究開発を推進し、利用者にとって魅力的で、かつ一次エネルギー消費量やCO₂排出量の削減に貢献する機器・システムの普及に取り組んでいます。
本バーチャル展示では、産業用ヒートポンプに関する研究成果、産業用ヒートポンプを対象とした「ヒートポンプ研究開発設備」のバーチャルツアー、さらに電中研が取り組む需要家側の事例をご紹介します。

I.「ヒートポンプ研究開発棟」バーチャル見学会

国内で販売されている数多くの産業用ヒートポンプの評価が可能な設備のバーチャル見学ツアーを開催

- 見学先 |ヒートポンプ研究開発棟
- 日 時 |2026年11月19日(木) (1)11:00 (2)14:00 各回30分
- 募集人数|各回50名程度(先着順)
- 申し込み|https://forms.cloud.microsoft/r/D6uynrbyBu

II. 産業用ヒートポンプの社会実装強化に向けて

技術開発・技術評価・技術展開に資する研究

■高効率な脱炭素技術

産業用ヒートポンプは,省エネかつ電化技術であり,高効率な脱炭素技術です.また,技術成熟度が比較的高く,経済的にも成立しやすいため,カーボンニュートラルに向けて優先度の高い技術として国内外で注目されています.
供給温度が100℃未満のヒートポンプは,幅広い加熱能力の製品ラインナップが揃ってきています.一方,供給温度が100℃以上の高温ヒートポンプについては,国内外で開発・実証が活発化しており,技術オプションが拡大中です.
日本の産業部門の熱需要の27%は,200℃未満の低温熱需要であり,様々な産業の,洗浄,殺菌,乾燥,蒸留,濃縮などのプロセスで需要があります.これらの熱需要の脱炭素化に向けて,産業用ヒートポンプの貢献が期待されています.

■社会実装強化に向けて

産業用ヒートポンプが社会で広く活用されるようになるためには,幅広い温度域で作動できるようにヒートポンプの技術開発を進めることに加え,様々な産業やプロセスに技術展開できるように,産業用ヒートポンプのプロセス統合手法を構築することが必要です.

研究内容

1. 低GWP冷媒を用いた高効率な高温ヒートポンプの技術開発

産業用ヒートポンプの適用範囲を拡大するためには,ヒートポンプ供給温度の高温化が求められます.あわせて,冷媒規制の強化によって,今後はヒートポンプの冷媒には地球温暖化係数(GWP)の小さいものを使用することが必須です.電力中央研究所では,高温ヒートポンプサイクルにおける冷媒選定指針を構築するとともに,実機を用いて冷媒の適用性評価試験を実施し,冷媒メーカや機器メーカとともに高温ヒートポンプの技術開発に取り組んでいます.

2. 各種産業用ヒートポンプの技術評価

産業用ヒートポンプの導入にあたっては,そのエネルギー性能に加え,経済性や信頼性も求められます.電力中央研究所の試験設備を用いて,市場投入前のヒートポンプの性能評価と信頼性確保を目的とした試験を実施しています.実際の工場での利用を想定し,幅広い条件での運転性能やエネルギー性能を把握するとともに,経済的に成立する運転条件を明らかにします.将来的には,産業用ヒートポンプの規格化にも貢献していきます.

3. プロセス統合手法の構築による技術展開

産業用ヒートポンプの製品ラインアップは拡充していますが,未だ導入初期段階です.各種工場の生産プロセスは多様であり,プロセスに適合したヒートポンプの選定が求められますが,その方法論は定まっていません.電力中央研究所では,産業用ヒートポンプの導入を検討する際に活用可能なプロセス統合手法の構築を進めています.エンドユーザーが自ら活用したり,エネルギーサービス会社がソリューション提案する際に応用できるように,手法の体系化を目指しています.

III. 電化に関連する様々な研究(その1)

農業電化と業務用電化厨房

エレクトロヒートと関わりが深い、農業電化と業務用電化厨房の研究概要と成果を紹介します。

概要と成果

業務用電化厨房

業務用厨房は年間を通して冷暖房をしているため、換気量が過大だと冷暖房負荷が大きくなります。業務用電化厨房では燃焼による排ガスがなく、機器からの発熱量が少ないため、換気量が減らせる可能性が指摘されていました。

電中研では、業務用電化厨房にふさわしい換気設計手法の確立を目指して、約10年にわたり1000ケース以上の実験をして、業務用電化厨房の必要換気量を明らかにしてきました。

電中研が蓄積した実験データに基づき、2017年2月に日本エレクトロヒートセンター「業務用電化厨房施設の換気設備設計指針(JEHC103-2017)」が策定されました。指針が策定された後に、電中研我孫子地区の本館新築計画が始まり、1階には職員用の食堂が入ることになりました(写真)。この食堂の厨房では、日本エレクトロヒートセンター「業務用電化厨房施設の換気設備設計指針(JEHC103-2017)」に基づき換気設計を行いました。同指針を採用した第1号物件です。

指針を適用した場合、平成30年版以前の国土交通省監修「建築設備設計基準」に基づく排気フード面風速0.3 m/s相当の換気量に対し、2~3割程度の削減が一般的です。一方、本厨房では、指針を適用した上で換気量のさらなる削減を図る工夫を行い、「建築設備設計基準」に基づく換気量の5割減で運用しています。

運用開始から6年が経過しますが、換気量を抑えても厨房内の温熱快適性には問題は生じていません。さらに、従来の換気設計と比べ、空調消費電力量は年間15.9MWh削減されることが分かりました。これは一般的な戸建住宅3軒分の年間消費電力量に相当します。

削減量だけで見れば、大きくないという見方もありますが、設計初期に換気量の考え方を見直すだけで、継続的な省エネルギー効果が得られる意義は大きいと考えます。本事例を参考に同指針を採用する動きも出てきています。

関連情報に追加の情報があります。

農業電化研究

電中研の農業電化研究の歴史は長く、1957年の「農電研究所」設置以降、60年以上に渡って研究を積み重ねてきました。直近10年の研究の柱は、LEDとヒートポンプの利用技術の開発です。

LEDは人工光植物工場での重要性が増しており、電中研は連携機関と共に植物工場野菜の付加価値や採算性の向上に資する基礎研究を進めてきました。

ヒートポンプは、温風暖房機やボイラに代わる高効率の温熱源としてだけではなく、冷却や除湿が必要な過程でも活用できる多機能性を有します。

近年は、周囲の再生可能エネルギーと農業や漁業とのエネルギーマネジメントを検討しています。VEMS(Village Energy Management System)は、農山漁村のエネルギーを地域単位で最適に管理するための次世代エネルギーマネジメントシステムです。農山漁村の主要産業である農林水産業に余剰エネルギーを有効活用することで新たな農漁業スタイルを創出し、農山漁村のカーボンニュートラル化、エネルギーと食の地産地消を実現します。

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また、資料ダウンロード「革新的VEMSの開発とモデル地域実証」がございます。

IV. 電化に関連する様々な研究(その2)

エアコン選定支援ツール・家庭用ヒートポンプ給湯機開発振り返り

電中研では職場や家庭の快適性に関する研究も行っています。また、冷媒として二酸化炭素を使った給湯ヒートポンプを2001年商品化し、2025年には累計1000万台の出荷となりました。その経緯を振り返ります。

研究概要と成果

住宅での温熱快適性・レジリエンス性確保

近年の住宅の断熱性能向上や地域による気象条件の差異等を考慮して、利用状況に応じたエアコンの容量を選定する「エアコン選定支援ツールASST」を開発し、快適性と省エネ性の両立を図っています.本ツールは、2025年度の省エネ大賞を受賞しました.

ASSTは「関連情報」からアクセス可能です.

また、断熱性能の向上によるエアコン消費電力や室内温熱環境への影響、住宅でのレジリエンス性向上等に関する多くの研究を行い、成果を公開しています.関連情報に情報を記載します.

V. 研究成果の公開>関連情報>電中研研究報告書検索サイトにて"C22011"で検索

電中研では1985年以降、給湯分野の省エネを目標とした給湯ヒートポンプの開発を継続して参りました。
1995年には二酸化炭素冷媒の研究に着手しました。その後、1998年から東京電力様、デンソー様と共同で「家庭用自然冷媒CO2給湯ヒートポンプ」の商品化に取り組み、2001年「エコキュート」として上市しました。他メーカーの参入により市場が活性化し、2025年3月には累積出荷台数1000万台を超えました。

関連情報に追加の情報を記載します。

V. 研究成果の公開

様々なメディアを使い研究成果を発信しています

電中研の研究成果は学会発表、研究報告書、学術論文、特許などで発信されています。

75周年を記念して電中研が主催する「創立75周年記念エネルギー未来シンポジウム2026」がエレクトロヒートシンポジウムの開催期間内である11月12日に実施されます。需要家サービス分野の研究成果を俯瞰して「電気の多面的役割と変化する電力需要・供給」について講演があります。

電中研の研究報告は研究報告書の形で一般に公開されます。公開されている報告書は「研究報告書DB」で検索し、閲覧可能です。併せてご活用下さい。

情報発信

「創立75周年記念エネルギー未来シンポジウム2026」のお知らせ

創立75周年記念エネルギー未来シンポジウムにおいて、本分野に関わる研究をまとめて「次の需給の展望」について報告します。

開催:11月12日
ご参加の申し込み:11月9日
(関連情報にQRコード(申し込みURL)等を掲載)

詳細は資料ダウンロード「創立75周年記念エネルギー未来シンポジウム2026」をご覧下さい。

関連情報の「電中研研究報告検索」にて検索とダウンロードが可能です.

出展社情報

一般財団法人電力中央研究所

ウェブサイト
https://criepi.denken.or.jp/
会社概要
電力中央研究所(電中研)は,科学技術研究を用い電気事業を通じて社会に貢献する電気事業共同の研究機関として,1951年に創設されました.以来70年以上にわたり,我が国の経済社会の発展を支える電気事業に対して、研究開発の面から貢献してきました.創業者である松永安左エ門の理念「産業研究は知徳の錬磨であり,もって社会に貢献すべきである」を継承し,理(ことわり)の解明に取り組むとともに,電気事業とその先にある社会を考え,研究成果の創出とその社会実装に取り組んでいます.

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